8月24〜25日の2日間に渡って開催された「ITC Conference 2014」、2日目はITコーディネータの活動事例が発表されました。
印象深かったのは、「西武信用金庫とITコーディネータの連携」でした。
西武信用金庫常勤理事・業務推進企画部長の高橋一朗さまよりIT活用サポート事業の紹介と経緯についての説明がありました。
西武信用金庫は、東京都中野区に本店があり、270あまりの支店を持つ信用金庫です。
中小企業向けの貸出は現在日本一なのだそうです。
また、預貸率(預金に対する貸出の割合)も現在日本一だそうです。
15年前に金庫のビジネスモデルの転換をはかり、中小企業の決算を支援すべく、課題解決型の営業を軸に、事業支援活動・課題解決支援を行ってきました。
少子高齢化や海外との競争など、日本社会の構造が大きく変わることを見越していた矢先、金融だけに特化していていいのか?という疑問が生じたのだそうです。
顧客である中小企業全社の決算をよくしないと、金庫自体の経営が成り立たなくなってしまう。
そんな視点から、事業支援活動の展開を始め、現在では25事業に上るそうです。
中小企業への支援のために様々な機関と包括協定を結び、より具体的により中小企業に寄り添った支援を、とお願いし、連携した支援を行った結果、顧客企業のほとんどは事業継続・運営が可能になっているのだそうです。
返済の見込があるから融資を行い、計画通り返済してもらえる、そんなスパイラルが実現しています。
ITコーディネータ協会とは平成25年12月6日に包括的業務提携を締結、ITコーディネータで構成する専門チームを組織し、金庫独自の専門家派遣をはじめとするIT活用サポート事業を行っているそうです。
顧客企業の中には、過去にIT導入で失敗した経験を持つ企業も少なくはないそうです。
ITが導入され、本来であれば経営が強化されていたはずなのですが、
環境の変化や技術の躍進があるにも関わらず、一度ITを導入したら半永久的に使えると思っている企業があったり、IT導入において現場と経営層の意思の疎通が図られていなかったり、ベンダーの言いなりになってしまったり、導入時に他との比較がなかったり、等様々な要因で導入失敗の経験があるのだそうです。
だから、ITを入れても成果は出ない、という結論が出てしまっているのだとか。
西武信用金庫では、 中小企業の課題解決のための支援事業に年間数億円の予算を組んでおり、「手間をかけお金をかけている」のだそうです。そのため、専門家による初期相談や助言について、中小企業は無料で利用できます。非常に敷居の低い施策といえます。
記者発表の際に「このモデルを全国に広めて行きたい」と仰り、その後、たくさんの方々が視察に訪れたそうですが、未だ提携には結びついていないと聞いているのだそうです。
地域の金融機関に「できないことをやろう!」と巻き込んで欲しい、と仰っていました。
ITコーディネータの小林邦人さまからは具体的なサポート内容の説明がありました。
中小企業の目先にある課題、その奥の課題を一人で対応するのは困難なことから、
現在7名でチーム編成し、毎月1回金庫の方を交えたミーティングや、SNS活用で情報の共有や課題解決を図っているそうです。
顧客企業に対するWEB戦略の立案や在庫データベースの整理など具体的な支援事例もご紹介下さいました。
この取組事例を伺いながら、前日の講演の楠木建教授の「戦略ストーリー」が思い浮かびました。
西武信用金庫の高橋さまは、「(中小企業支援を)社会貢献というよりも自分(金庫)のためにやっている」と仰っていました。取引先の業績が良くならないと自身も生き残ることが出来ない、といういわば背水の陣なのでしょうが、即効性がなく遠回りなこちらの施策を理解していても実行に移せる企業は少ないような気がします。とはいえ、自身の利益ばかりを追求していると、顧客ばかりか協力者すら去ってしまい、いつの間にか周囲には誰もいなかった、ということになりかねません。
どこに軸足をおくべきか、まずは正しく見極めること、周囲をhappyにする視点を持つことを念頭において考える必要があると思いました。